1.水星を象徴として解読する場合の素材
【ギリシャ神話関連】
ヘルメス(メルクリウス) 商売や泥棒や使者の神
ヘルメストート(トート神×ヘルメス神の習合神)
【錬金術】
水銀
【ヨーロッパ文化】
ヘルメス文書・ヘルメス思想(キリスト教神秘主義)
【日本関連】
水星は古代中国大陸式には辰星(しんせい)と書く(辰星という言葉自体は別の星をさすこともある)
五星(歳星(木星)・熒惑(火星)・鎮星(土星)・太白(金星)・辰星(水星))の1つ
2.水星のシンボルとしての考察
水星は英語ではMercury(マーキュリー)でラテン語でMercurius(メルクリウス)です。この単語、何かに似ていると思いませんか。Merchant(マーチャント・商売人)やMarket(マーケット・市場)が言葉のイメージとして近いのではと感じた人は言語センスがよいです。「merx (商売・商品・取引)」というラテン語が共通語源として考えられます。
日本でもメルカリという個人間売買の有名アプリがありますが、こちらもラテン語「mercārī (商いする)」をふまえてのネーミングだそうです。
水星(Mercury)=商売、というイメージは語源をふまえると入ってきやすいのではないでしょうか。欧米言語から直訳すると水星というより商人星なのが水星(Mercury)の特徴です。ローマ神話文脈からいうと商売の神メルクリウスの星ですが、メルカリの星(売り買いする星)と覚えてもイメージはほぼほぼ同じようなところになるのではないでしょうか。
ローマ神話のメルクリウスは、ギリシャ神話のヘルメスと同一視されます。オオクニヌシとシヴァ神が同一視されて大黒さんになるみたいな日本でよくある習合と似たような神々の習合現象は地中海世界でもさかんでした。Hermēsは、フランスのファッションブランドでも有名ですが、フランス語として読む場合はHを発音しないのでエルメスとなります。
錬金術
水星(Mercury)の場合に重要なシンボルとして「水銀」があります。英語でmercuryを辞書で引けば水銀が出てくるのですが、「水星→水銀」は知らないと連想しにくいので記憶しておきましょう。
Gold(金)と太陽、Silver(銀)と月、であれば色から連想しやすい組み合わせだと思います。ただ、日本語では水銀と水星は水の漢字しか同じではないので日本語では分かりにくい連想な気がします。
錬金術やカバラ(QBL)の暗号は決まった法則性などあってなきがごときタイプの暗号ではあります。なぜなら同じシンボルや術語の意味が動的に変わるからです。ただ、全ての象徴言語が「いつも違う意味」というわけでもなく、定番的に使われるものもあります。
「硫黄・水銀」は錬金術の世界観で「世界の二大要素」となることがわりとある定番的な象徴です。これは、アリストテレスが「火・水・土・風」に世界を分けたのと似たような世界観です。「硫黄:温」「水銀:冷」みたいな解読にすれば漢方っぽい雰囲気でも見ることができます。
東洋の神仙術の導師は、硫化水銀を使った不老不死の薬を作ろうとしていましたが、洋の東西を問わず「水銀」は人間にとって魅力的な何かをもっていたようです。なお、辰砂は水銀の鉱物ですが朱色の顔料(丹)としても有名です。お寺や神社の鳥居の朱の色ですが、あれも水銀(mercury)由来と考えると興味深いものがあります。
ヘルメス×トート
エジプトの神とギリシャの神がセットになって融合したのがヘルメストリスメギストス(三重に偉大なヘルメス)です。
エジプトの書記の神「トート」(月の神でもある)とギリシャの智恵や商売の神「ヘルメス」(水星)との融合神格です。のちに伝説的な錬金術師としてのヘルメスも加わり、三重神格として扱われました。ルネサンスの知識人たちの間でも「ヘルメス主義」というキリスト教神秘主義が流行りました。(三重に偉大なヘルメスの三重がそれぞれなにをさすかは諸説あります)
神秘主義なので文章化に限界がある思想ですが、例えば「全は一、一は全」「ミクロコスモスとマクロコスモスの照応」といった世界観が特徴的なところと言われています。ここだけ取り出すと東洋思想と区別はしにくいですが、言葉化できる範囲だけを取り出すと世界の神秘思想はだいたい似てしまうのかもしれません。
後の薔薇十字団などのヨーロッパの神秘主義の底流に流れる大きな流れの1つがヘルメス思想です。このあたり、ヘルメスという言葉にはフリーメーソン的なキリスト教世界の神秘主義というイメージがつくこともあると認識をしておくとよいでしょう。
日本の寺社の世界でのトリスメギストスと似たような三神融合の事例だと「大黒天と毘沙門天と弁財天が融合して「三面大黒天」になった」という例があります。こちらの三面大黒天は豊臣秀吉が信仰していたことで知られます。「神々の融合現象」が起こることがある点も、日本と古代地中海世界の類似点の1つと言えるかもしれません。
3.まとめ「水星」のシンボルとしての意味
智恵(商人的)・スピード・神秘・関係性 など
・西洋の神秘主義の源流の1つ(ヘルメス思想)
・和名でも「辰星」振動する星と書かれる(日)
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シンボル関連 参考文献など
キリスト教シンボル辞典(ミシェル・フイネ),ギリシャ神話シンボル辞典(ソニア・ダルトュ),図解古代エジプトシンボル事典(リチャード・H. ウィルキンソン) ,サインとシンボル(アドリアン・フルティガー),図像学入門(山本陽子),聖書,Wikipedia (English,日本語)etc
※この記事は、理解のステップとして面白いものをという編集方針を基本としています。(シンボルという言葉は極めて広い意味で使っています。)