鳩 | イメージ シンボル 小辞典

シンボル小辞典

1.鳩を象徴として解読する場合の素材

【聖書神話】
ノアの箱舟の物語(創世記)
聖霊が鳩の形でやってくる(四大福音書)

【ギリシャ神話】
愛と性と美の女神アプロディーテーのシンボル

【日本史】
源氏の神、八幡神(武士の神)のお使いとしての鳩

2.鳩のシンボルとしての考察

聖書神話

平和のシンボルとしての鳩、という発想はノアの箱舟の伝説にさかのぼれます。世界が大洪水で滅び、ノアの一家と動物たちだけが箱舟にのって海の上を漂っていた。ノアが様子を探ろうとしてまずカラスを放すが、戻ってこなかった。次に、鳩を2回放すと、鳩は2回目にオリーブの木の枝を加えて戻ってきたので、ノアは洪水の水が引いたことを知ることができた。

ここから「いい知らせをもってきた鳥」としての鳩のイメージが生まれます。

さらに、四大福音書では聖霊(Spiritus Sanctus)の象徴としての鳩のイメージが登場します。例えば、マルコによる福音書1章10節、イエスが洗礼を受けるシーンでは、「そして、水の中から上がられるとすぐ、天が裂けて、聖霊がはとのように自分に下って来るのを、ごらんになった。」という描写があります。鳩は聖霊のイメージになっているわけです。

洗礼の有名な絵画にヴェロッキオ(+ダ・ヴィンチ)のものがありますが、鳩が降りてきている表現になっています。

キリスト教世界の聖霊としての鳩は、「聖化(祝福)」のイメージを持っておくと分かりやすいでしょう。

この2つが平和の象徴としての鳩のイメージの主な土台と考えることができます。

ギリシャ神話

一方で、ギリシャ神話文脈だと、鳩はアプロディーテーの使いです。美と性と豊かさの女神ですので、鳩は「清らかさ」と「淫蕩」と、どちらのイメージにもなりえます。

「愛」は色んなイメージのある言葉で、例えば、友情としての愛か恋愛感情としての愛か、みたいな話が考えられます。古代ギリシャ式にいくなら「アガペ―(キリスト教文脈では神の愛、それ以前は自己犠牲的な愛)」「フィリア(仲間愛)」「エロス(性的な愛)」「ストルゲ―(家族愛)」と色んな面があります。同じように、愛の女神のシンボルである「鳩」も色んな愛を象徴しうるということです。

さて、多産のシンボルの動物というと、現在だと「兔」が有名です。が、鳩も実は「多産」の属性をもちます。(年に5,6回繁殖する年中発情期状態の動物)

多産で元気というのは、ネガティブにみれば「年中発情期」という解釈になりますが、ポジティブに見れば「豊かさや生命力のシンボル」という解釈になります。「ドンドン増える」というのは「豊作や大漁」のイメージにつながります。

日本

さらに、日本神話の文脈でも考えると、鳩は源氏の弓矢神である八幡神(武神)の使いとなります。つまり、平和のシンボルではなく戦いのシンボルとしての鳩というものが日本の伝統的なイメージの文脈には存在します。

戦と平和だとキーワードとして真逆ではあります。ただ、平和というのは「秩序のある状態」です。秩序を保つためには、なんらかのパワーが必要です。例えば国の法律なら、警察や軍隊や裁判所という「法律のこれを破ったら、破った人は監獄行き」みたいな仕組みが整っていることが必要となります。「ごめんですむなら、警察いらない」のです。その意味で、力の担い手である武神は「秩序(平和)の護り手」として解読することもできます。

まとめ

ここまで3つの世界をイメージとしてもっておくと、

平和の象徴(教会的)↔軍神の象徴(神社的)
聖なる愛の象徴(アガペ-的)↔俗なる愛の象徴(エロス的)

と二軸でイメージできるので、発想を広げやすくなるでしょう。

3.鳩とタロット

トート版の塔のカードには、わりと分かりやすく「ノアの箱舟のオリーブを加えた鳩」が描かれています。破壊の後の救いや平和を象徴する動物です。「絶望の後の希望」や「いい知らせ」を象徴するシンボルになっていると思います。

ウェイト版のカップのエースには、鳩が聖杯へ降りてくる絵があります。こちらは聖霊(Spiritus Sanctus)の象徴としての鳩と思われます。キリスト教の神(Deus)の無限の愛が、鳩の形をとって聖杯を満たす、みたいなイメージでしょうか。

そして、鳩(聖霊)が杯に注がれるということは飲み物に聖霊の力が移転することなので、ウェイト版のカップのエースの鳩(聖霊)は「元気の源泉」「愛の源泉」「ワクワク(湧く湧く)の源泉」みたいにとっておくといいかもしれません。

4.ざっくりまとめ

鳩=平和・聖霊・愛(性・聖)・多産(豊穣)・サムライ(ガードマン)

 

5.参考文献・参考サイト

聖書
wiki

 

nakajima oumi

nakajima oumi

シンボルと精神世界の研究家。 「キレイはキタナイ、キタナイはキレイ」。日本文化と欧米文化は異なるからこそ面白い。

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