天使 | イメージ シンボル 小辞典

シンボル小辞典

1.天使を象徴として解読する場合の素材

【聖書神話関連】
楽園追放 (天使が楽園の入口を守る)(創世記)
ヤコブの梯子 (夢の中で天使が梯子をつたって天と地を行き来する)(創世記)
ヤコブが天使と格闘して勝ってイスラエルという名をもらう話(創世記)
イサクの犠牲 (天使が犠牲をささげるのを止めに来る)
イスラエルの守護者  大天使ミカエル
旅の守護者  大天使ラファエル (トビト記)
聖母マリアへの受胎告知 大天使ガブリエル (ルカ福音書(1:26-38))
最後の審判でラッパをふく天使 (黙示録)
最後の審判でサタンと戦う大天使ミカエル(黙示録)

 

【イスラム伝承関連】
開祖ムハンマドへ神の言葉を伝える 大天使ジブリール(=ガブリエル)

【ギリシャ神話】
エロス(ローマ式に言うとキューピッド) 恋愛天使

【日本史】
特になし

2.天使のシンボルとしての考察

聖書に登場するほとんどの天使は「神のメッセンジャー」的な性質を強く帯びています。戦う天使からメッセージを伝える天使まで色々ですが、「天の使い」という文字通りの性質を持っているということです。

一方でギリシャ神話の文脈だと、アフロディーテの息子エロス(キューピッド)は「恋愛スイッチ」な存在です。エロスの矢があたると恋愛感情が燃え上がる、という伝説で有名です。赤ちゃんに羽根の姿でよく描かれます。

少しややこしいことに、聖書の「ガブリエルやミカエルやラファエル」も、ギリシャローマ神話のエロス(キューピッド)も、どちらも天使と呼ばれています。

ただ、絵画などで見る場合、「エロス(恋愛スイッチ)」なのか「神の使者」なのかは絵の文脈でみればあまり間違えないと思います。「恋愛的な絵」で天使がいたらエロス(キューピッド)のほうですし、恋愛の欠片もなさそうなテーマの絵画ならだいたいはエロスではないほうの天使です。

聖書で有名な天使は、ガブリエル・ミカエル・ラファエルの三大天使です。

ガブリエルは、受胎告知で登場しているのが一番有名なシーンでしょうか。イエスの母、聖母マリアのもとに「聖霊によってあなた様は身ごもりました」と伝えに来るシーンです。キリスト教美術の定番モチーフで、色んな作品があります。ガブリエルは一般に女性的に描かれます。このシーんではよく純潔の象徴として「百合」を持っています。

次に有名なガブリエルの登場シーンは、「最後の審判」のラッパを鳴らす天使がガブリエルという説がよく知られています。(聖書にはガブリエルと明記はされてませんが)

ミカエルは、ドラゴンを退治する伝説(ヨハネ黙示録)や、イスラエルの守護者としての伝承があります。英語読みするとMICHAL(マイケル)です。ミカエルは一般に男性的に描かれます。武器を持ってたり秤をもっていることが多いです。


ラファエルはトビト書というやや知名度の低い物語に登場しますが、この物語でラファエルが主人公トビトの案内人をすることから、旅人の守護者とされています。


ところで、日本の伝承だと天使はいませんが、天人や天女は存在します。こちらの天人とヨーロッパの天使たちの大きな外見的な差異は、「翼」が描かれるかどうかです。

イカロスの翼というギリシャ神話では、翼を使ってグライダー的なものを作って空を飛ぶのですが、上昇しすぎると翼の強度の限界を超えてしまって墜落してしまうという話があります。

リアルな翼をつけていることが多いヨーロッパの天使たちと、飛行に翼を使わないアジアの天女たちの差というのは、グライダー伝説的なものを持っているかどうかというところも1つあるのかもしれません。

3.天使とタロット

トート版やマルセイユ版の恋人達のカードには、「エロス」的な恋愛天使が描かれています。

ウェイト版の恋人達はちょっと変則的で、恋愛カードですが、ギリシャ神話のキューピッドではなく聖書的な天使が描かれています。そして描かれているシーンは聖書のアダムとイブの話を象徴する内容になっています。(最初の夫婦ですが、恋愛的な要素はやや低い話です)

これはマルセイユ版の「エロス(キューピッド)」のままにしておいたほうが恋人カードらしかったのでは、という気はします。ただ、ウェイトはキリスト教神秘主義を奉じていたので、ギリシャ神話的な異教要素を追放したかった可能性が高いです。

そして、ウェイト版の恋人達の天使を聖書世界の三大天使に当てはめるなら、ラファエルとして解読するのが無難だと私は思います。

「ミカエル=火(父性)、ガブリエル=水(母性)、ラファエル=風(父性×母性)」と四大元素的に分類すると、そうなるというのが理由その1。

あとは、ミカエルだと光と闇の戦いがはじまりそうで、ガブリエルだと処女懐胎がはじまりそう、そうなると旅の案内者という属性をもつラファエルは「出会いを司る天使」としては一番適任なのかしら、というのが理由その2です。

なお、ウェイト版やマルセイユ版の最後の審判のカードでラッパを吹いている天使は、一般に大天使ガブリエルとなります。

(解釈によってはミカエルの可能性もあり、聖書に該当の天使の名前は明記はされていないため)

4.ざっくりまとめ

天使=聖書の神のお使い(ミカエル=戦士・ガブリエル=メッセンジャー・ラファエル=案内人)・恋愛を司るエロス(キューピッド)

 5.参考文献・参考サイト

聖書
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nakajima oumi

nakajima oumi

シンボルと精神世界の研究家。 「キレイはキタナイ、キタナイはキレイ」。日本文化と欧米文化は異なるからこそ面白い。

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