にわとり | イメージ シンボル 小辞典

シンボル小辞典

1.鶏を象徴として解読する場合の素材


【聖書関連】
ペテロの否認(マタイ26章)
堂々たるものの比喩(箴言30章)

【ヨーロッパの伝承】
コカトリス(鶏×蛇のモンスター)

【日本関連】
鶏子(とりのこ)のごとくだった世界 (日本書紀の神話の表現)
太陽神を呼び出す鳥(天岩戸神話)、函谷関
チキン龍田

【チベット仏教】
三毒の象徴としての「鶏・蛇・豚」
など

 2.鶏のシンボルとしての考察

神話の鶏のイメージは「朝を告げる鳥」に集約されると言っても過言ではないでしょう。ここから「旭日や日の出」とも結びつきます。朝や太陽と結びつく鳥といえば「カラス(日本神話やギリシャ神話では太陽神の使いでもある)」もいるのですが、鶏のほうがやや存在感が強い気がします。

一方で「卵」や「鶏肉」は人間にとって昔から知られた食材であり、「卵から生命が誕生する」というのは一種の生命の神秘でもあるでしょう。豊かさや生命の象徴としての鶏(や卵)というのもポイントになるでしょう。

生命力の強さというところから連想を広げると、場合によっては悪徳の象徴として鶏を使うことがあるのもうなづけるかもしれません。

聖書の物語の「鶏」

「絶対にあなたを裏切りません」と言っていたイエスの弟子ペテロに対して、「お前は鶏がなくまでに、3度私の事を知らないというだろう」とイエスが言うのですが、その言葉が実現してしまい、ペテロが泣くシーンがあります。この物語で鶏はかなり重要な役割を果たしています。(ペテロの否認)

一方で箴言では「堂々たるもの」の例として「おんどり」が出てきます。

いずれにせよユダヤの世界においても「鶏」は身近な生き物であったということは推測できるでしょう。

天岩戸神話にも登場する「鶏」

古事記や日本書紀の天岩戸神話、太陽神が怒って引きこもってしまったので世界が暗闇になって、残された神々が太陽神を引きこもっている岩屋から引っ張り出そうとする神話があります。

この際に神々が行ったことの1つに「常世の長鳴鳥」を使うものがあり、よくある解釈ではこの鳥は「鶏」で、「鶏をなかせて、朝だから太陽よ出てこい」と呼びかけたという解釈になります。

こちらの鶏はそこまで強い印象はないですが、この神話が語られていた時代から日本列島に鶏がいたことは推測できるでしょう。

東アジアの物語での鶏と言えば「函谷関という関所を鶏の鳴き真似をして突破した」という物語のほうがもしかしたらインパクトは強いかもしれません。(史記)

食べ物の「鶏」

「鳥(チキン)の竜田揚げ」という料理があります。なぜ「竜田」なのかは謎ですが、「竜田(龍田)」と言えば古くから知られる紅葉の名所で、竜田神は風の神です。百人一首にも「嵐吹く 三室の山の 紅葉葉は 龍田の川の 錦なりけり」とあります。

一説によると「鶏肉の赤く照る雰囲気と紅葉の赤をかけて龍田揚げと命名された」ということらしいです。このこじつけでは「チキン=赤=紅葉」と色の連想でつながっていることになります。

チベット仏教における三毒と鶏

チベット仏教の曼荼羅では「鶏・蛇・豚」が仏教の三毒という三つの悪徳の象徴として用いられることがあります。

wikipediaより 六道輪廻図(ラサのセラ寺)
Hiroki Ogawa

椎名林檎の楽曲でも「鶏と蛇と豚」がありますが、あれのモチーフは仏教です。三毒は「貪瞋痴(とんじんち)」というのは「むさぼり=貪」「いかり=瞋」「無知=痴」ですが、「鶏は貪(とん=貪欲)の悪徳と、蛇は怒りに、豚は無知に」、それぞれ配当されています。

ヨーロッパの怪獣として

コカトリス(英:Cockatrice)という鶏と蛇をかけあわせたモンスターが中世ヨーロッパの物語にはでてきます。ハリーポッターではバジリスク(英: basilisk)が出てきていましたが、この2つはほぼ同じような形状のモンスターです。(蛇と鶏の合成)

3.タロットと鶏の子

「鶏」ではなく「卵」のほうはトートタロットにはあちこち出てきます。例えば、蛇に巻かれた卵( World Egg )も出てきますし、羽根のはえた卵もでてきます。これは「宇宙がここから生まれてくる卵」みたいな日本書紀の神話みたいな「いまだ別れていない世界」みたいなイメージを持っておくと便利だと思います。

Jacob Bryant’s Orphic Egg (1774) (wikipediaより)

慣用句で「鶏が先か?卵が先か?」というのがありますが、この問いは無限に循環するタイプの問いなので「卵=無限の循環を含む」みたいな解釈も面白いかもしれません。

卵を「生命の象徴」や「豊かさの象徴」として見る場合、イースター・エッグ(復活祭の卵)のイメージで解読するのがよいケースもあるかもしれません。

4.「鶏」のシンボルとしての意味

朝を告げる鳥・太陽・卵・食用・闘鶏 など

・カラス(太陽神の使い)とも対比するとよい
・食べ物のイメージいろいろ(竜田揚げなど)
・時に悪徳のシンボルにも(チベット仏教では三毒のシンボルが「鶏と豚と蛇」)

 

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シンボル関連 参考文献など

キリスト教シンボル辞典(ミシェル・フイネ),ギリシャ神話シンボル辞典(ソニア・ダルトュ),図解古代エジプトシンボル事典(リチャード・H. ウィルキンソン) ,サインとシンボル(アドリアン・フルティガー),図像学入門(山本陽子),聖書,Wikipedia (English,日本語)etc

※この記事は、理解のステップとして面白いものをという編集方針を基本としています。(シンボルという言葉は極めて広い意味で使っています。)

nakajima oumi

nakajima oumi

シンボルと精神世界の研究家。 「キレイはキタナイ、キタナイはキレイ」。日本文化と欧米文化は異なるからこそ面白い。

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