1.馬(騎士)を象徴として解読する場合の素材
【聖書関連】
ヨハネの黙示録の騎手(乗り手)
【キリスト教関連】
聖ゲオルギウスの伝承(ドラゴンスレイヤー)
【エジプト関連】
戦車はあるが、馬頭の神はいない
【ギリシャ神話関連】
太陽神の馬車
海神ポセイドンの馬車
【日本関連】
神への捧げものとしての馬(絵馬)
神の乗り物としての馬
馬頭観音
2.馬(騎士)のシンボルとしての考察
馬のイメージは「力強さ」と「戦闘」です。馬にひかせた戦車は古代世界ではギリシャから中国大陸まで、各地に見られました。馬上で戦う人たちも、十字軍の騎士のように主に槍をもつのか、鎌倉武士のように主に弓を持つのかはさておき、昔から歴史上に登場します。
エジプトの太陽神は船にのりますが、ギリシャ・ローマの太陽神は馬車に乗って天を駆け巡ります。日本の太陽神は特に「太陽の馬車」や「太陽の船」の神話を持ちませんが、太陽神の子孫は馬ではなく船にのって征服に出かけます。
古代エジプトに関しては、あれだけ動物の頭の神々がいる割に、「馬を頭にした神」がいないのも興味深い所です。(日本には馬を頭上に乗せた馬頭観音という存在がいます)
ロバ・らば・馬
馬とロバの中間の「ラバ」という品種があります。雌ウマと雄ロバをかけあわせて生まれます。一般に馬よりも速度では劣り、性格は頑固になるものの「頑丈」になるようです。
ロバは「イエス・キリスト」がエルサレムに入る時に乗っていたことでも知られます。馬とロバを比較すると、「馬→強さ、ロバ→優しさ」「馬→賢さ、ロバ→愚かさ」「馬→華やか、ロバ→地味」のイメージになることが多そうです。
食用にするかしないか
食用の馬肉は牛肉に比べると現代の日本ではかなりマイナーです。外食では馬肉(馬刺し)を出すお店はありますが、一般家庭で食卓に上がることは少ない食材と言えるでしょう。(ちなみに、猪肉=牡丹、鹿肉=紅葉、馬肉=桜、という異称があります。)
ヨーロッパでの馬肉は「食べ物がない時にやむをえず食べることはあっても普段は食べない」ものであったようです。このあたりは「食べもの」扱いになる「牛」とだいぶ扱いが違います。
100馬力
馬は、農耕馬や馬車の馬など、騎士の戦場で乗る馬以外にも様々な使われ方をしてきました。
モーターに「馬力」という単位を使いますが、これは「馬車の場合で換算するなら」という発想です。ジェームズ・ワットが蒸気機関を発明した時に作った単位ですが、馬の時代だったので「馬でいえば何頭分のパワー」という表現になったのでしょう。
19世紀創業のフランスのファッションブランド「HERMES(エルメス)」のロゴマークは馬車です。19世紀に馬具職人としてスタートたブランドのためです。シャーロックホームズのロンドンにも馬車はありふれています。
人類が「馬車から自動車へ。農耕馬からトラクターへ。」と乗り換えたのは、そんなに大昔のことでもないのです。
3.タロットでの馬
ウェイト版では、小アルカナの騎士(若者)、大アルカナの太陽と死神に登場します。
馬にのった騎士は「戦い」を連想しやすい言葉ですが、「死神」が「騎士の姿」をしているのは、戦いと死の結びつきを想像しやすいです。太陽の子供も馬に乗っていますが、これはギリシャ神話などの太陽神が駆る馬車のイメージを重ねてもいいかもしれません。
トート版で馬が出てくるのは、小アルカナの騎士(この場合は意味的にはキング)が主な所です。こちらは乗り手のキャラクターに応じた馬が描かれているのが特徴でしょう。(地の騎士の馬は静止しており、風の騎士の馬は疾走している)
また、騎士のイメージに関しては、「ドラゴンを退治する聖ゲオルギウス」「アーサー王と円卓の騎士」「聖杯伝説」などの伝承のみでなく、史実の「テンプル騎士団」や「十字軍」もチェックしておくとよいでしょう。
テンプル騎士団は金融業も営んでおり、当時のヨーロッパでもトップクラスの経済力を持っていました。中世ヨーロッパで僧侶や騎士がはたしていた役割は、現代人がイメージするよりだいぶ広いので、調べてみると興味深いと思います。騎士は戦う人、司祭は祈る人、というイメージは間違いではないのですが、中世の人達は意外とその枠からはみ出ていることがあります。
4.ざっくりまとめ 馬のイメージ
馬=「強さ」「戦い」「太陽」「貴族的」
※同様に人間に身近な家畜である「牛」と対比してみよう
※地味な動物のシンボルとしての「ロバ」と対比してみよう
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シンボル関連 参考文献など
キリスト教シンボル辞典(ミシェル・フイネ),ギリシャ神話シンボル辞典(ソニア・ダルトュ),図解古代エジプトシンボル事典(リチャード・H. ウィルキンソン) ,サインとシンボル(アドリアン・フルティガー),図像学入門(山本陽子),聖書,Wikipedia (English,日本語)etc
※この記事は、理解のステップとして面白いものをという編集方針を基本としています。(シンボルという言葉は極めて広い意味で使っています。)