月(月神) | イメージ シンボル 私家版小辞典

シンボル小辞典

1.月(月神)を象徴として解読する場合の素材


【聖書関連】
小さな光 (創世記1:16~)(太陽は大きな光)
聖母マリア「無原罪の宿り」の絵画 (黙示録12:1)

【その他ヨーロッパ関連】
満月の怪物(狼男など)

【エジプト関連】
トト(書記の神だが月の神としても)

【ギリシャ神話関連】
月の女神アルテミス(太陽神アポロンとは双子)

【日本関連】
勢至菩薩
かぐや姫
ツクヨミ(月読 or 月夜見)
月神の持つ若返りの霊水
真如の月(真理のシンボル)

2.月(月神)のシンボルとしての考察

月のイメージは「静寂」や「神聖性」などが思いつきやすいでしょうか。日本では「真理の象徴」のように神聖性の極のイメージを持つこともありますが、欧州では満月の狼男のような「狂気」的なイメージを含むこともあるのが興味深いところです。

ギリシャの月の女神は意外と苛烈なエピソードがあり、女神アルテミスは自分の裸をのぞきみした猟師を鹿に変えてしまし、猟師が自分の猟犬に襲われて死ぬように仕向けます。

マリア様の絵画に三日月が描かれることがありますが、こちらは「聖母」なので慈悲深いイメージです。「無原罪の宿りimmacolata concezione」という宗教的なテーマの絵画です。多くの人によって描かれています。

原罪というのはキリスト教の基本的な世界観の一つで「すべての人間は生まれながらに罪を背負っている」という考え方です。カトリック教会の聖母マリアはイエス・キリストと同様に聖なる存在となっているので「原罪はない」「昇天する」という教義になったのではないかと思われます。

Francisco de Zurbarán, Immacolata Concezione.

マリア様と「月」というのはわりとある描かれ方ですが、この構図はヨハネによる黙示録の12:1「また、大いなるしるしが天に現れた。ひとりの女が太陽を着て、足の下に月を踏み、その頭に十二の星の冠をかぶっていた。」を土台にしています。

大半のこのテーマの絵は三日月&マリア様ですが、黙示録にはっきり三日月と指定されているわけではないせいかこんな絵もあります。

Diego Velázquez, Immacolata Concezione.


カトリック教会のこの「無原罪の宿り」の記念日が12月8日ですが、同じ12月8日は仏教では成道会といってお釈迦様が悟りを開いた記念日になっています。

古い日本語には「真如の月」といった表現があり、月は悟りの象徴として用いられることがあります。また、江戸以前の日本には、「月の出を待って宴会などをして楽しむ」という月待ちという風習も存在していたようです。初日の出という「日の出を待つ」風習は現代日本でもありますが、それの月版と考えればイメージは近いと思います。

日本の神仏の世界では、「勢至菩薩」と「ツクヨミ」が月と関連する神仏です。能楽の羽衣では「南無帰命月天子 本地大勢至」と謡われていますが、月神と勢至菩薩をイコールとしている表現の一例です。

月のお姫様といえば「かぐや姫」もいます。こちらは不死の薬を帝に与えるというエピソードがありますが、月の光には「若返りの力」があるという信仰が昔の日本にはあったようです。

西では狼男を覚醒させ、東では不老不死の力を配り、お月様もなかなか忙しい存在ですが、「月の神秘の力は、人間の隠された力を高める」といった見方をすれば分かりやすいのかもしれません。

地中海のあたりにいくと、新月(三日月)はトルコのシンボルでもあります。クロワッサン(croissant)というパンは、ヨーロッパがトルコ(イスラム)との戦い(第二次ウィーン包囲)に勝利したのがキッカケで作られたパンという説があります。なので、トルコの象徴としての新月(三日月)を食べているのです。

3.タロットと月

女司祭の足元の月は聖母マリアの月のオマージュ的に見ると分かりやすいと思います。

月のカードの月は、どちらかというと「未知なる世界」「潜在意識」「こちら側ではなくあちら側」みたいな解読でよいでしょう。この月は狼男伝承などの「まがまがしい月」のイメージでしょう。

理性の象徴としての太陽に対して、非理性の象徴としての月というのも分かりやすい対比の1つです。

「私の好きには理由が3つある。1つ目は・・、2つめは・・、3つめは・・・」が太陽(知性)のラブレターだとすると、
月(感情)のラブレターは「とにかく好き。好きだから好き。全部好き。」といったイメージになります。

4.まとめ「月」のシンボルとしての意味

神聖性・若さ・悟り・永遠・周期性 など

・欧州では満月に対して「凶」のイメージもある
・理性よりは反理性 (心理占星術的)
・こちら側ではなく、向こう側のなにかすごいもの (日本的)

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シンボル関連 参考文献など

キリスト教シンボル辞典(ミシェル・フイネ),ギリシャ神話シンボル辞典(ソニア・ダルトュ),図解古代エジプトシンボル事典(リチャード・H. ウィルキンソン) ,サインとシンボル(アドリアン・フルティガー),図像学入門(山本陽子),聖書,Wikipedia (English,日本語)etc

※この記事は、理解のステップとして面白いものをという編集方針を基本としています。(シンボルという言葉は極めて広い意味で使っています。)

nakajima oumi

nakajima oumi

シンボルと精神世界の研究家。 「キレイはキタナイ、キタナイはキレイ」。日本文化と欧米文化は異なるからこそ面白い。

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