1.太陽を象徴として解読する場合の素材
【聖書関連】
大きな光 (創世記1:16~)(月は小さな光)
【その他ヨーロッパ関連】
無敵の太陽 ( sol invictus )
【エジプト関連】
ラー・ホルス 円盤 (朝=ケプリ 正午=ラー 夕方=お羊の頭の神クヌム)
太陽の船の神話
【ギリシャ神話関連】
太陽神の馬車
【日本関連】
大日如来
阿弥陀如来
アマテラス
2.太陽(太陽神)のシンボルとしての考察
太陽のイメージは「生命」や「超越性」などが思いつきやすいでしょうか。ただ、夏の猛暑を作り出すのも太陽ですので「災い」の連想もできます。
ギリシャ神話では「太陽の馬車を借りた太陽神の子供が失敗して地上に災厄をもたらし、ゼウスの雷によって撃ち殺される話(パエトン)」や「太陽に近づきすぎた作り物の翼で空を飛ぶ子供が失敗する話(イカロスの翼)」が残っています。前者は太陽神の馬車が暴走したせいで、砂漠ができたり海が干上がったり地上が火の海になったりします。
太陽神は、ギリシャでは馬車ですがエジプトでは船にのっています。エジプトが船なのはナイル川の水運が非常に大きな存在感をもっていた地域特性かもしれません。
月との対比
ギリシャ神話をみると、太陽は男性神で月は女性神となっています。聖書神話(創世記)は太陽は「大きな光」で月は「小さな光」と表現しています。古事記神話では太陽神(女神)は「天(高天原)」を治め月神(男神)は「夜(夜之食国)」を治めています。太陽のイメージは月との対比によって土台づけられていることは多そうです。
ギリシャや日本と聖書の違いですが、太陽そのものが神性を帯びているのか、被造物としてのただの光か、というところに扱いの差があるのは留意すべき点です。
また、真夏の暑い盛りなどを考えると、「厳しさのシンボルとしての太陽(昼は暑い)」と「癒しのシンボルとしての月(夜は涼しい)」という対比も出てくるでしょう。
朝・昼・夕方
エジプトの太陽神は朝日・昼・夕日と別々の神がいるのが特徴です。日本の神仏で考えると、「朝日の光=アマテラスの光」「夕日の光=阿弥陀来迎の光」というイメージわけをしてもいいかもしれません。
夕日は夜の世界の入口、旭日は昼の世界の入口なので、朝日を拝みながら「彼岸へ・・・」と祈るよりは、夕日を拝みながら「彼岸
へ・・・」と祈るほうがしっくりきやすいのではないでしょうか。
「日出づる国の天子から日没する国の天子へ書を送る」(「隋書」東夷伝より)という表現は、聖徳太子が隋の煬帝に出した書状のものと言われています。これは、旭日と夕日という太陽の状態が「東の国の皇帝から西の国の皇帝へ」という地理の形容詞として使われている例としても注目することもできます。
東の太陽(朝日)と見るか、南の太陽(日中)とみるか、西の太陽(夕日)とみるか、太陽を考察する時は、どの方角のどの時間の太陽なのかでだいぶイメージが変わってきます。
神々のトップとしての太陽
ローマ帝国後期には無敵の太陽(sol invictus)という信仰が皇帝たちによって進められた時期があります。これは、たくさんの神々が存在する多神教だったローマ帝国の中で「1柱の特別な神」を置くという方向性です。(ローマ帝国は、最終的にはキリスト教という超越的な神をもつ一神教に乗り換えます。)
エジプトでもイクナトーンというファラオは、多神教世界のエジプトにアテン(太陽神)を唯一の神として導入しようとしました。(こちらは一神教的なシステムへの切り替えの試みは、イクナトーンの一代で終わります)
日本の古事記の神話も多神教ですが、主神たるアマテラスは太陽神です。(こちらは中世には大日如来と習合したことにより太陽神の属性を残したまま超越的な神としての神格も得ます。)
ギリシャ神話は雷神ゼウスがリーダーですが、たくさんの神々がいる世界で突き抜けたトップの神をおきたい時に太陽神が配されることはわりとあるようです。
3.太陽(太陽神)とタロット
タロットや星占いの文脈では、「太陽=意識」「月=無意識」といった対比はよく使われるものの1つです。惑星と金属の照応でいくと、「太陽=黄金」「月=銀」となることが多いですが、これは一般的なイメージとそう離れない連想でしょう。
また、「熱射病や干ばつなどの原因としての、災いとしての太陽」と「命を育む、恵みとしての太陽」という明るい面と暗い面の両方のイメージをチェックしておくことも重要になるでしょう。
4.ざっくりまとめ 太陽(太陽神)のイメージ
太陽=「正義」「救済」「災い」「昼」「超越」
※「月」や「月の神」との対比もしてみよう
※「朝日」と「夕日」も対比してみよう
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シンボル関連 参考文献など
キリスト教シンボル辞典(ミシェル・フイネ),ギリシャ神話シンボル辞典(ソニア・ダルトュ),図解古代エジプトシンボル事典(リチャード・H. ウィルキンソン) ,サインとシンボル(アドリアン・フルティガー),図像学入門(山本陽子),聖書,Wikipedia (English,日本語)etc
※この記事は、理解のステップとして面白いものをという編集方針を基本としています。(シンボルという言葉は極めて広い意味で使っています。)