1.塩(しお)を象徴として解読する場合の素材
【聖書神話】
塩の柱になったロトの妻(創世記)
あなた方は地の塩である(マタイ)
【古事記神話】
天地開闢のところ
【慣用】
塩をまく(カルタゴなど)
【語源】
「 サラリー(Sarly:給金)の語源としてのSal(塩)」
【錬金術】
パラケルススの三原質(硫黄・水銀・塩)
2.塩のシンボルとしての考察
塩の持つ機能
調味料、防腐剤、脱水、清め、貨幣(古代ローマなど)があります。水と塩は人間の生命維持にかかせないものの1つです。
塩の種類
海水塩、岩塩、湖塩、が主なところ。日本では海水から作られるが、イスラエルの死海のように塩水湖から作られることもある。
塩の用途(現代)
思いつきやすいのは「料理用(食用)」ですが、現代社会は「工業用」の用途が大きくなっているのが特徴です。ソーダ工業と呼ばれるジャンルで、例えばガラスです。雑にまとめると、塩(NaCl)に炭酸ガスやアンモニアガスなどを作用させてソーダ灰(Na2CO3)を作り、ソーダ灰×珪砂→ガラス、という工程のようです。
料理用の塩を考えた場合、塩化ナトリウム(NaCl)の純度が高すぎず色んなミネラルがあれこれ含まれている塩のほうが適することはわりと多いのではないかと思われます。微量な他のミネラルなどをなくしてしまうと味の複雑性が消えてしまうためです。昔ながらの製法で塩を作ると海水の成分(海水塩)なり土壌の成分(岩塩)なり色々とナトリウム以外のものも小さく入ってきます。
宗教行事などでは「清め」として使われることが多いのはあまり地域性を問わない塩の特徴です。
バスソルトという使われ方もあります。塩分を含む温泉は日本にはあちこちにありますが、現代ほど流通があまり発展していなかった時代は、塩分多めの温泉の水から塩を作ることもあったようです。
塩の用途 古代
食用は食用でも、「保存食を作るための塩」の役目は冷蔵庫が一般家庭に普及している現代よりもかなり大きかったと推測できます。
お清めの用途も昔からのものです。
また、プリニウスによるとローマの兵士の給与はSal(塩)で支払われたいたそうですが、「貨幣の1つ」として「塩」というのがあったのも特徴です。英語のSalary(給与)の語源はラテン語のSal(塩)とされますが、これは塩で給与が払われていた時代に由来すると言われています。
塩の物語(日本)
「古事記」
「塩こをろこをろ」という表現が天地の始まり的な神話の中にあります。海水を神様たちが鉾でかきまわして、そこから滴り落ちた塩が重なり積もって嶋になったという神話です。(これが日本列島のはじまり)
日本列島では縄文時代から「海水を煮詰めて塩を作る」ことは行われていたようですが、そういう地域性をふまえて読んでみると「海水から塩を作る」が常識だったことが推測できる神話でもあります。(日本列島はヨーロッパやインドや中国と違って岩塩鉱がない)
「百人一首」
「藻塩」を大事なモチーフした和歌が百人一首にあります。「来ぬ人を 松帆の浦の 夕なぎに 焼くや 藻塩の 身もこがれつつ」(定家)
昔の藻塩の製法、海藻に海水をたっぷりしみこませて、ゆっくりゆっくり焼く、という製法だったようです(強火で一気に焼くと焦げてしまう)
藻塩の工程をよく考えてみると、じんわりと恋する気持ちが全身に浸透していくようなイメージが伝わるので、確かにいい和歌だなあと感じられます。
聖書(キリスト教)における塩
マタイ伝には「あなた方は地の塩である」という表現があります。(山上の垂訓)これは「あなたたちは大切な存在なんですよ」くらいの意味です。
ソドムとゴモラの話(創世記)では、「(後ろをふりかえってはいけないと言われていたのに、後ろを見てしまった)ロトの妻が塩の柱になった」という記述があります。(聖書の舞台であるパレスチナには死海という塩の湖があります)
レビ記(2:13)では祭祀で捧げものに使う穀物について「塩で味付けしてお供えすること」とあります。ユダヤ人の唯一神は塩を好んだようです。
「邪をはらう」的な意味で「塩をまく」ということが日本でもありますが、シケムの塩まき(土師記9:45)という話が聖書にあります。これは、シケムの町に塩をまいて「二度と人が住めないように」と呪ったという話です。
※聖書とは別ですが、ローマ帝国がカルタゴを滅ぼした際に関しても、二度とカルタゴが復興しないようにと塩がまかれたという同タイプの伝承があります。
錬金術での塩
パラケルススは、硫黄(燃焼)、水銀(流体)、塩(固体)の三原質を提唱しました。この場合の塩はとても大きな分類名であって、現代語の塩とは意味が異なりますので注意が必要です。
(世界のすべてが、塩と水銀と硫黄に分類されるみたいなイメージ)
また錬金術での塩は、固体イメージのこともあれば結合原理イメージの時もあります。
タロットと塩
塩として絵を解釈するかは状況によるでしょうが、結晶体(クリスタル)がでてくる絵はあります。
・トート
女司祭、ディスクのプリンセス
また、錬金術記号の「硫黄・水銀・塩」のうちの「塩」が登場するものとしては
・RWS(ウェイト)
運命の輪
があります。
ヨーロッパの場合「岩塩」というものが日本より身近な存在になるので、クリスタル=塩、という連想はしやすい可能性があります。(例、ドイツのザルツブルクは塩の砦という意味の地名で、岩塩もとれる地域。)
※塩の結晶というと立方体のイメージが最初に出てきそうですが、実はピラミッド形な塩もあります。
3.まとめ「塩」のシンボルとしての意味
塩は用途として「保存・調味・清め」というものがあり、「浄化」や「永遠」のようなイメージと結びつきやすいところがあります。生命維持に不可欠なものの1つなので、「貴重」というイメージにもつながりやすいかもしれません。
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シンボル関連 参考文献など
キリスト教シンボル辞典(ミシェル・フイネ),ギリシャ神話シンボル辞典(ソニア・ダルトュ),図解古代エジプトシンボル事典(リチャード・H. ウィルキンソン) ,サインとシンボル(アドリアン・フルティガー),図像学入門(山本陽子),聖書,Wikipedia (English,日本語)etc
※この記事は、理解のステップとして面白いものをという編集方針を基本としています。(シンボルという言葉は極めて広い意味で使っています。)