愚者(フール)のタロットカードはよく「水星(ヘルメス)」と関連付けられます。ところで、ヘルメスは伝令神や商業神であると同時に泥棒の神でもあります。泥棒という言葉はいいイメージがないのが普通だと思いますが、ここからポジティブな意味も引き出せると、「水星(ヘルメス)=愚者(フール)」のイメージは自由度が広がります。
かっこいい泥棒さんの例
「泥棒や盗賊の神様を礼拝しよう」というPRがされることは現代ではないと思います。ただ、ヒーローとしての泥棒というフィクションは現代でもいくつかあります。
・アルセーヌ・ルパン
・ルパン三世
・石川五右衛門
・鼠小僧
・怪盗〇〇
などなど
探偵ものや怪盗物は1つのジャンルとして定着しているといってもよいでしょう。フィクションの中では「カッコイイ泥棒」は定番の設定の1つです。
ルパン三世の名シーン
「ルパン三世カリオストロの城」は宮崎駿監督の名作の1つですが、最後にこんな会話が入っています。
銭形警部「くそっ、一足遅かったか。ルパンめ、まんまと盗みおって。」
クラリス「いいえ。あの方は何も盗らなかったわ。私のために戦ってくださったんです。」
銭形警部「いや、ヤツはとんでもないものを盗んでいきました。」
銭形警部「あなたの心です。」
クラリス「。。。はい」(笑顔)
この会話では「心を盗む」という言葉が、非難ではなく賞賛の文脈で用いられています。
盗賊や泥棒はなぜカッコよくなれるのか?
ルパン三世で言えば、不当に閉じ込められていたお姫様を広い世界へと連れ出すからです。人質救出をしてくるのが泥棒さんなだからです。
ロビン・フッドのような義賊という話でいえば「一部の悪人が独占していた富を、広くみんなに分配して、世界をよくする」という社会を癒す機能をもっているわけです。
フィクションの世界などでは、独占禁止法や人質救出特殊部隊な機能を盗賊がもっている設定があるとイメージしてもいいかもしれません。
「所有する・独占する」という正義に対して「配る・広める」という正義をぶつけているのが、盗賊や泥棒というキャラクターの役割だと言ってもよいでしょう。
囚われていたものを開放する、というキーワード
水星(ヘルメス)のような泥棒の神と商業の神を兼ねる存在がいた理由としては、泥棒というキーワードが犯罪だけをさすのではなく「社会正義」も持っていたというところは注目しておくと便利そうです。
愚者のカードでも「水星(ヘルメスあるいはマーキュリー)」を連想した時はこうした「独占されていたものを、公開してしまおう」的なキーワードを意識してみるとよいかもしれません。例えば、なんとなく秘密とされていたものをどんどん公開してみんなの役に立てようみたいな話です。
追記
「海賊」という言葉は「泥棒」よりもさらに「かっこいいイメージ」が強いキーワードですが、海賊がポジティブな連想をさせることが多いのは、英国が海賊活動で成り上がって世界帝国になったという歴史的事実の影響が多いと思います。