西洋人のスピリチュアル系の人もしくはタロット・オーラソーマなど西洋系の術式を専攻している人に日本の神々を説明する時は、カバラ的な視点を用いると面白いかもしれません。
西洋神秘主義のお約束の図形であるユダヤ密教由来の生命の樹を使ってみましょう。エヴァンゲリオンのOPなどで少し一般にも有名になった図形です。この図形は、上から下に至る、天地創造の流れ、下から上にいたる人が神になる流れ、この二つを表しているのが特徴的なところです。(生命の樹そのものの説明は省略しますので、はじめてこの図形を見た方はwikipediaなどを参照してください。)
この樹には10のセフィラ(数の意)と呼ばれる円があります。
それぞれ
1 原型界 アツィルト
2-3 創造界 ブリアー
4-9 形成界 イェツィラー
10物質界 アッシャー
という風に世界を4分類してとらえています。4段階で世界が形成されているという考え方です。原型界が最も純粋な世界で下の物質界までくると目に見え手で触れる世界をさしています。また、中央の柱が均衡のとれた場所で、左右はそれぞれ積極もしくは消極の2極にふれた状態を象徴します。
では、セフィラの上から順に日本神話対応をしてみましょう。
最上段の
1.ケテル Keter / 王冠 (頭の上にあるものを象徴 根源を象徴)
2.コクマー Chokmat /智慧 (意志の力を象徴 宇宙の積極原理を象徴)
3.ビナー Binah / 理解 (生み出されたものを象徴 宇宙の消極原理を象徴)
この3つ組には、
1.アメノミナカヌシ (宇宙根源神)
2.タカミムスヒ (生成力の神(陽性の力))
3.カミムスヒ (生成力の神(陰性の力))
を対応させます。”道は1を生じ、1は2を生じ、2は3を生じ 3は万物を生じる。”(老子)ではありませんが、ここまでは、東西の神秘思想はあまり深く考えずに対応させることが可能です。
次の段の
4.ケセド / chesed (優しさ。固定力を象徴)
5.ゲブラー / geburah (厳しさ。破壊力を象徴)
には
4.イザナギ(父の優しさ。生の神)
5.イザナミ(母の厳しさ。死の神)
を対応させます。今回は「1日に1500人の産屋を建てる」という建設的な力を司るイザナミと、「1日に1000人の人間を死の国に送る」という破壊的な力を司るイザナミという分け方をしています。
次の段の
6.ティファレト / Tiphareth (調和 or 美 上昇と下降の調和を象徴。)
7.ネッツァク / Netzach (永遠 or 勝利 垂直的上昇性を象徴。)
8.ホド / Hod (栄光 水平的拡大性を象徴。)
には
6.ツクヨミ
7.スサノオ
8.アマテラス
の三貴子を対応させます。高天原の主神として天を支配する太陽神アマテラスと、放浪の旅を繰り返して成長する英雄神スサノオ、そして2人の目立つ兄弟の間にあってほぼ何もしない月神ツクヨミ(月を読むという意味の神名)、この3兄弟を3人組として対応させるわけです。
そして最下段の
9. イエソド / Yesod (基礎 完成や統合もしくは混沌を象徴)
10. マルクト / Malkuth (王国 具体化や結実などを象徴)
には
9.オオゲツヒメ(食べ物の女神)
10.オオクニヌシ(国家建設をする男神)
を対応させます。
オオゲツヒメは自ら死ぬことで死体から穀物を生まれさせるという「生と死のサイクルを象徴する神」であるので、物事の完成と統合を象徴するイエソドに配します。そして、地上で国作りを行った神であるオオクニヌシには物事のマルクト的属性である物事の具体化を象徴させます。
かなり強引に日本神話を西洋式で整理してみましたが、こういうネタは説明する人によって大きく意見が分かれると思いますので参考程度に。ユダヤ密教の生命の樹(ツリーオブライフ)は、10個で1つの分類パターンなので、全体を見て配列してみると面白いと思います。
余談ですが、神道的世界観とユダヤ・イスラム・キリスト教的世界観で一番大きく異なる点の一つは「時間感覚」です。神道的世界観に明確な「はじまりとおわり」はありません。「最後の審判」のような「世界の終り」的なイベントは日本神話にはありませんが、聖書の神話には「世界のはじまる話と世界が終る話」が明確にあります。ここを意識するとコミニュケーションギャップが少し減るかもしれません。