大ヒット漫画と神話の共通点

物語構造

行くと帰る」(世界の移動)という視点に注目すると

例えばドラえもんの映画というのは、

「主人公の日常世界→異世界→試練の達成→帰還」

という構成になっています。のび太と恐竜・のび太と竜の騎士・・・・、「のび太と○○」な大長編ドラえもん(映画)は基本的に全てこの構成です。

ワンピースも

「最初にいる世界→違う世界へ移動→試練の達成→次の世界へ」

というのがわりと王道の展開です。ああいう雑誌連載の人気漫画の場合、あまり長編にすると途中から読んでる人がついてこられなくなるので、短めのサイクルで次々と新しい話がはじまるスタイルが多いようです。

少年漫画つながりだと、男塾などもそうですね。

「学園漫画編(六本木で不良外国人を成敗して帰ってくる)」
「驚邏大四凶殺(きょうらだいよんきょうさつ)編(富士で決闘して戻ってくる)」

という風に、○○編、○○編、延々と続きます。

雑誌連載ものだと「読者の要請がある限りは永遠に連載し続ける必要がある」ので小さい物語が無限に繰り返すという構成が好まれるわけです。永遠に続けられますから。ドラゴンボール等も似たようなものです。

 

この「同じような構造の話が舞台を変えて繰り返される」というパターンは大ヒット漫画と上代の神話も実は同じ点なのです。「行くと帰る」(世界を移動しながら成長する英雄)という視点でみると

 

1.イザナキの黄泉下り

日常世界→妻の死→黄泉の国へ(非日常)→逃走→地上の日常世界へ

これは死の国から帰ってくるという 「行くと帰る」のストーリーです。「帰る」ところが盛り上がる所になっています。

2.スサノオの物語

日常世界(勘当される)→高天原(兄弟対決)→出雲国(怪物退治と結婚)→根の国(娘を手放す父親)

スサノオは「行く」ばかりで元の場所には戻りませんが、どんどん世界を移動して成長していくストーリーです。この神様は最初だけは泣き虫だったりしますが、結局はいかにもヒーロー(英雄)という豪快なキャラクターになります。(主人公の活躍できる要因としてはやっぱりイケイケドンドンな積極的な性格だからです)

3.オオクニヌシの物語

日常世界→因幡(求婚)→山で殺される→母神が復活させる→また殺される→母神が復活させる→逃走→さらに根の国へ→お姫様と出会う→求婚の試練→帰還→兄たちとの戦い→勝利→国作り

これは分かりやすく「行くと帰る」話です。最初はのび太ばりのいじめられっ子なのですが、最後は成長して自分の王国を作ります。ガンダムのアムロやエヴァのシンジ君と同じで受け身タイプですが、最初は弱くて最後は強さが出てくるという成長が楽しめるキャラクターです。

4.山幸彦の物語

日常世界→試練→賢者に導かれて海神の宮へ→お姫様と出会う(結婚)→使命を思い出す→帰還→兄との戦い→勝利→新しい仲間を得る

これも「行くと帰る」パターンです。山幸彦の視点で見ると、宇宙戦艦ヤマト(イスカンダルにいってコスモクリーナーをもらって帰ってくる)と似たようなものです。

 

こうして見ると、大きな視点で見た時に似たような構造の話が何回も語られていることが分かります。ただ、それぞれの話において、主人公のキャラクターが違ったり、主人公の成功要因が違ったりします。

ここがポイントで、少し違うけど根本的には同じようなテーマを扱う話が複数あると、物語のエッセンス的なメッセージが届きやすくなるのです。なので、大きなくくりで同じようなテーマの話が複数入っているというのは、物語に人が引きつけられるための不可欠な要素と言えます。スサノオは尊敬しても共感できない人も、オオクニヌシには共感できたりとかするわけです。

結局、主人公の変化や成長をテーマにする物語の場合、大きな物語の枠組みは共通してくる構造が多くなるのです。

nakajima oumi

nakajima oumi

シンボルと精神世界の研究家。 「キレイはキタナイ、キタナイはキレイ」。日本文化と欧米文化は異なるからこそ面白い。

関連記事

特集記事

TOP