トート・ウェイト・マルセイユの比較コンテンツです。絵を1つづつみながら、キャラクターや性質の違いを考察しています。マルセイユはバリエーションがたくさんあると思いますがここでは画像のものをイメージしています。
1.マルセイユ
>名称
La Mat もしくはLe Fol
>主なシンボル
・かみつく犬
・道化な帽子
・旅の装備(杖・荷物)
ものによっては犬があからさまに愚者の生殖器に噛みついている絵柄のものも。分かりやすく「バカっぽい」のも特徴でしょう。ただ、一番「右へ、右へ(絵が左から右へ展開すると読めば、未来へ未来へ)」と動き出しそうな、前身感があるとも感じられます。
なお、旅人ということは特定の社会(世間)に属さない「よそもの・ばかもの」であるということでもあります。古くなって緩慢な死を迎えそうな世界を救えるのはいつでも「よそもの・ばかもの」です。
この絵の愚者は「小さな革命をあおる浮浪者」とでもしたらいいかもしれません。
2.ライダー(ウェイト)
>名称
The fool
>主なシンボル
・お供をする犬
・崖
・旅の装備(杖・荷物)
・太陽
こちらは「旅人」感はありますが、愚者自体のバカっぽさは最も低く見えます。旅人が崖っぷちに立っている絵にすることであまり安全を確保していないという「愚かさ」が表現されています。
この絵は「愚かさ」というよりは「純粋さと純粋さのもつ危うさ」の表現に流れているかもしれません。もし「fool」という文字がなければ絵だけから「バカっぽさ」を感じ取るのはやや難しいです。
よく「崖から落ちそうな愚者」という解読がありますが、愚者というタイトルから読めばそう読めますが、絵だけを見た場合は「元気さ」だけが見えることもありますので。
この絵の愚者のキャラを想像すると「受けを狙ってない行動が結果としてお笑いの芸になるタレント」などになりそうです。(天然の応対がテレビでの芸になってしまう希少なキャラの人)
3.トート
>名称
The fool
>主なシンボル
・グリーンマン
・葡萄(デュオニソス)
・ワニ
・袋(惑星記号のコインがいろいろ)
・道化っぽい靴
・虎
・蝶
・カデュケウス的なもの
など
こちらの愚者は道化っぽい衣装に身を包んでいます。また、葡萄というお酒に近いシンボルを持っているのも特徴です。葡萄を持つ人をギリシャ神話的に解読するならデュオニソス(酩酊の神)となりますので「バカっぽさ」はマルセイユ版に匹敵するでしょう。
「袋の中に、色んなものがある」絵も特徴で、「まだ実現されてない無限の可能性」みたいなものを感じやすい絵と解読することもできるでしょう。ここだけみるとサンタクロースや大黒さんっぽいです。
特徴としては「旅人感」は絵としては消えている点でしょうか。理性ではなく野生のキャラという意味では、角のある人として描かれているのでそちらで表現されていると思います。
この絵はタイトルをつけるなら「ただただ明るいタロットの精霊」とでもしたいところです。野生や狂気というものをポジティブに表現しているのが特徴と言えるので。「バカとぶどうと聖存在」などとしてもいいでしょう。
まとめ
愚者はどうスポットを当てるかに3デッキの個性の違いが出てる気がしました。
あくまで例えばですが
笑う浮浪者・・・マルセイユ
陽気な旅人あるいは世界一周修行中の若者・・・ライダーウェイト
創造の精霊・・・トート
などなど「サブタイトル」を遊び感覚でつけてあげると個性が見えやすくなると思います。
愚者は道化師でもあるので常識的な人たちの社会の外側にいるイメージは共通しますが、「浮浪者」っぽさのあるマルセイユ、「貴族的な旅人」にも見えるライダーウェイト、「もはや人間ではなく精霊」に見えるトート、というのが絵の比較の例です。
あとは向いてる方向から行くと、「右向きで、東へ東へ」のマルセイユ、「左向きで、西へ西へ」のウェイト、「正面へ飛び出す」のトート、で解釈を分けても面白いかもしれません。
「西方ー夕日 東方ー朝日 正面ー昼間」とか「左ー過去、右ー未来、正面ー今」とか、あれこれイメージしようはあると思います。
そういえば日本語名がなぜ「愚者」で定着したのかという質問記事が知恵袋にありましたが、外国語と日本語は1対1対応はしていないので考え出すと沼にはまる要素だと思いました。その辺を深堀りしだすと、例えばTemperanceを節制と訳すか節酒と訳すかとか、Emperorを皇帝と訳すべきか大将軍などと訳すべきか(東アジア史の皇帝は武人感が減るが、ヨーロッパの皇帝は基本的に武人)、特に正しい回答はないですが訳語の再検討の余地ならいくらでもありそうです。