「あんたバカァ? 」で始める古典的交渉術

エッセイ

まず「あんたバカぁ?120%間違っているわよ」的に断言して相手の出鼻をくじき、その後で「落としどころを見つける交渉に入る」という方法は世の中に非常にありふれた交渉術です。誰でも無意識に使ったり使われたりしていると思います。

バカな上司に毎日使われてうっとうしいという人もいるかもしれません。生意気な後輩がちょこちょこ使ってきて面倒という人もいるかもしれません。

この交渉術は、政治の世界ではよく観察することができます。分かりやすいのは中国共産党です。

中国共産党の日本との外交交渉は歴史認識を取り上げて「貴様は間違っている!」と断言する作戦を百年一日で使っています。

1.中国共産党の正当な政府が主張する「正しい歴史」がある
2.日本の主張する歴史は「(お前ら敗戦国だから)間違っている」と主張する。

ここでジャブをくらわして精神的に優位なポジションをとろうとするわけです。

彼らの言う「正しい歴史」の内容の検証は今回はしませんが、とにかく「貴様は間違っている!」と言い切ることで、相手の罪悪感を攻撃して優位をとろうとする作戦なわけです。

近代史というのは政争の道具になる宿命があるのですが、それは仕方がないことです。

領土問題を考えれば分かりやすいですが公の場では

「(歴史的事実がどうであれ)自国の領土です」

と主張する以外の選択はお互いにできないわけで、歴史的事実がどこかが本音の論点でないことは明白です。

歴史学とは別次元の力を使わないと根本的に問題が解決することはありません。

どうでもいい争いなら「棚上げして口げんかするフリだけ」が一番いいですし、譲れない争いなら軍事・経済などの別の力を背景に交渉するしかありません。

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政治の話はさておき、日常生活の中でも「貴様は間違っている!」式の交渉術を使われる機会、もしくは使うことになる機会というのは誰にでもある話です。

一番日常的なこの交渉の例をだすと、アジアのマーケットで値切る的な、家電などの価格交渉が一般的な市場での価格交渉でしょう。この場合の交渉はお買い物というエンターテイメントの重要な要素です。

買う側の値下げ交渉というのは

「高い。この値段は無理。●●円になれば買える。」

とまずは 「あんたは間違ってる!」と言い切ることから入るわけです。こう言われると、店員側も慣れたもので

「店長に聞いてますけど、他店価格を教えてくださいね。」

などと応じて、交渉ゲームスタートとなるわけです。
使われた場合は、相手も交渉術を使うタイミングと判断して使っているだけという理解をした上で、

却下するか検討するかを一瞬考えて、

却下するなら

「バカも休み休み言え」

という反応をする必要があります。

いきなり感情的に「君はバカかね?」とストレートに反応すると、相手ペースの交渉にされてしまうリスクが生まれます。
仮に自分が家電屋の店員だったとして、断る場合は一応上の人に聞くだけ聞いた上で

「●●以下には負けられません」

とやればいいだけの話なわけです。

逆に、赤字でも何でも売りたい状況なら「いい機会だ」と心の中で喜んで「しょうがないなー」という顔で安売りすればよいだけです。

譲れない問題で「間違ってる」と断言されると腹が立ちます。

が、相手が交渉術的に「あんたは間違ってる!」作戦を使ってきた場合は、所詮はゲームです。ゲームに乗るかどうかは完全に自由です。

くだらない批判に真面目に応対しすぎると胃に穴が空くだけです。

 

nakajima oumi

nakajima oumi

シンボルと精神世界の研究家。 「キレイはキタナイ、キタナイはキレイ」。日本文化と欧米文化は異なるからこそ面白い。

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