「仕事が生きがい」の裏の意味

「仕事が生きがい」という人には二種類います。

片方は、有名企業の創業社長や、金メダルアスリート、経済的にも成功した芸術家など、本当に「仕事=生まれてきた目的」となっている素晴らしい人たちです。フリーランスな人の例ばかり出しましたが、会社員や役人といった方でも素晴らしい方はたくさんいます。こういう人の活動している姿を見ると、多くの人は元気や活力を感じます。やりたい事と稼げる事が上手に調和している、幸運と才能の両方に恵まれた人達です。

もう片方は、ブラック企業(人材を使い捨てる労働条件が劣悪な会社)で働くサラリーマンなどによく見られる、「そうとでも思い込まないとやってらんない」から無理矢理にそう思い込んでいる人たちです。こういう人の姿を見ると、多くの人は違和感やイライラを感じます。くだらない事で金を稼がざるをえない状況にいることを認めると自分がみじめになるから認めたくない人達です。

日本社会には「労働教」もしくは「仕事教」とでもいうべきカルト宗教的な価値観が静かに蔓延しています。これは、「仕事が生活の全てであることが正常」「仕事に人生の全てを捧げるのが美しい」「長時間労働やサービス残業がいいこと」「どんなに暑くてもスーツを仕事着にするのがよいこと」「働かざるもの食うべからず」などの価値観を含んでいます。この価値観は、少子高齢化社会や晩婚化社会の大きな原因の一つでもあります。「家族 < 仕事」だと「子育て」とか「家族」とかが入り込む余地がなくなってしまうからです。

パートのおばちゃんでさえ「子供が熱を出したから休みます」で嫌がられるという変な雰囲気もここから生まれます。まっとうな知性と感性がある経営者なら1人や2人が急に抜けても運営できるように組織を作るものです。極端な話、経営陣が交代したからといって会社がつぶれるとは限りません。社長でさえ入替がきくのですから、一般社員やパートにいたっては言わずもがなです。

ところで「自分がいなくなっても組織は回る」という冷厳な事実は「仕事教」信者にとっては受け入れがたい恐怖のようです。ここから「休む奴は悪」というおかしな同調圧力が生まれます。ナマケモノ経営者にとっては「誰かが休んだ時のことを考えた体制を作らなくていい。頭を使わずにすむし金もかからない。」という実にお気楽な環境が生まれるわけです。しかも従業員同士で勝手に圧力をかけあってくれるというオマケつきです。

多くの人にとっては「仕事が生きがい」を理想として無理に掲げる必要はありません。みんながイチローやスティーブ・ジョブズになれるわけではないのですから、「仕事がすべてに優先するという価値観」は時々ワキにおいてみることが大事です。

むしろ、「仕事なんかクソだ。」「そもそも人生そのものが苦だ(お釈迦様)」くらいに認識したほうが、無駄な息苦しさから解放されます。苦しさを苦しさと率直に認識することこそが、苦しいものを楽しくするにはどうすればよいかという発想の母体となるのです。

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