1.木を象徴として解読する場合の素材
【聖書関連】
生命の樹、善悪をしる木(創世記)
「主はぶどうの木、私は枝」(讃美歌)(ヨハネ15章)
【北欧神話】
ユグドラシル(エッダ)
【ヨーロッパ文化】
生命の樹(ユダヤ教神秘主義→キリスト教神秘主義)
【日本文化】
神木(寺社)
根の国(古事記)
【その他】
系統樹・宇宙軸・宇宙図
2.【木】のシンボルとしての考察
木の図形的な特徴
上方向と下方向へ伸びるというビジュアル的な特徴があるので、天と地の要素をあわせもつというのが一般的なイメージとしてあるでしょう。また、「樹」というのは、根・幹・枝葉・果実といくつかの要素に分けることができます。系統樹という言葉がありますが、「根→葉」と地図的に使うことができるシンボルと言えます。
「根」という言葉は「ROOT」すなわちルーツや起源や原因といった言葉に通じます。これ1つとっても「樹」という言葉が豊かな広がりをもつ言葉であることが見えてきます。
家系図を樹の形にかくFamilyTree(ファミリーツリー)というものが英語圏にはあります。これは「私」を底に上にどんどん「父母」を書き込んでいくものです。自分のルーツとつながるためのものとして「ツリー」が使われています。
古事記の神話にも「根の国、底の国」という表現が出てきますが、「土台の世界」といった意味で「根」というキーワードが使われています。このあたりは北欧神話のユグドラシルと少し似た表現になっています。
聖なる木(日本)
日本の伝承の世界だと、神木の中に「神性」を感じるというのは、古い時代から続く神道仏教的な世界の特徴です。「不思議な霊力のある木が発見され、木が流れ流れてご本尊の仏像になった」という長谷寺(奈良)の伝承があるのですが、これは「霊力のある聖なる木」というアイディアが日本列島に根付いていたことを示す例と言えるでしょう。
仏像自体は「石」でも「金属」でも、理論的には色んなもので作ることができます。ただ、それを「聖なる木」で作った伝承があるということは、資源が手に入る入らないの問題だけではなく、樹木への信仰のようなものが存在していたという要素も無視できないでしょう。
現代のライフスタイルの中でも「クリスマスツリー」は輸入概念ですが聖なる木の一種と言えます。
聖なる木(欧州)
欧州にも「聖なる木」という伝承はあり、例えば英国では「メイポール(Maypole)」という木の柱をたてて行うお祭りが現代でも生き残っています。英語のMayや仏語のMaiは日本語の5月で春のお祭りです。これは「豊穣のイメージ」と結びつきやすいのではないかと思います。
このお祭りについて、現代の欧州はキリスト教が広まった世界ですが、それ以前の時代のケルトの時代からのものという説があります。
Maypoleはイギリスですが、イタリアやフランスにも似たような「木の柱をたてるお祭り」は存在します。
フランスのものは、「アルブル・ド・メ(Arbre de mai)」で5月の木と呼ばれ、イタリアのものは豊穣の木(Albero della Cuccagna)というそうです。(Cuccagna=豊穣)

St. George’s Kermis with the Dance around the Maypole
Par Pieter Brueghel le Jeune — Sotheby’s, Domaine public, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=17682139
これはメイポールの絵ですが、日本のお祭りに興味がある人だと、運動会の棒倒しや諏訪の御柱祭と似たようなノリを感じてしまうかもしれませんが、欧州のメイポールは陽気にダンスをしていますので、運動会の棒倒しのような戦闘的なお祭りではなかったようです。
タロットカードでメイポールを連想しやすそうなものというと、RWS(ライダー・ウェイト)のワンドの4に関しては、似たような「春の祝祭の雰囲気」を持った絵柄になっています。
