これはロシアの昔話の研究をしていたプロップによる物語構造の整理の仕方です。下記の全ての要素を使うのではなく、この中からいくつか選んで整理すると(ロシアの魔法昔話の)全ての物語を説明できてしまうという性質のものです。最も単純な物語構造の整理には「行くと帰る」や「喪失と回復」がありますが、細かく見るのもこれはこれで便利です。
◆31の機能分類
「留守もしくは閉じ込め」,「禁止」,「違反」,「捜索」,「密告」,「謀略」,「黙認」,「加害または欠如」,「調停」,「主人公の同意」,「主人公の出発」,「魔法の授与者に試される主人公(贈与者の第一機能)」,「主人公の反応」,「魔法の手段の提供・獲得」,「主人公の移動」,「主人公と敵対者の闘争もしくは難題」,「狙われる主人公」,「敵対者に対する勝利」,「発端の不幸または欠如の解消」,「主人公の帰還」,「追跡される主人公」,「主人公の救出」,「主人公が身分を隠して家に戻る」,「偽主人公の主張」,「主人公に難題が出される」,「難題の実行」,「主人公が再確認される」,「偽主人公または敵対者の仮面がはがれる」,「主人公の新たな変身」,「敵対者の処罰」,「結婚(もしくは即位のみ)」◆7つの行動領域
「敵対者(加害者)」,「贈与者」,「助力者」,「王女(探し求められる者)とその父」,「派遣者(送り出す者)」,「主人公」,「偽主人公」※wikipediaより引用
※参考文献『昔話の形態学』 『魔法昔話の研究 口承文芸学とは何か』など
7つの行動領域にまず注目してほしいのですが、この分類の面白いところは主として「登場人物が何をするか(動詞)」に注目して物語を分類しているところです。
主人公に敵対する人(悪役)
主人公を援助する人(贈与者)
主人公を派遣する人(派遣者)
主人公に贈与する人(贈与者)
という具合です。こういう抽象化をしてくれると、別のジャンル、日本の神話や昔話の分析にも応用はききます。7つの領域から4つ使うとして
敵対者 鬼が島の鬼
贈与者 おじいさんとおばあさん(きびだんごをくれた)
助力者 いぬ・さる・きじ
主人公 桃太郎
とすれば、桃太郎の登場人物リストの出来上がりです。なお、例えば敵対者を「鬼→悪代官」と入れ替えると水戸黄門的な違うストーリーにすることができます。
敵対者 ヤマタノオロチ
助力者 イナダヒメの両親
王女とその父 イナダヒメと姫の親
主人公 スサノオ
にすれば八岐大蛇退治の神話を説明できます。大蛇退治と似た構造の神話であるアンドロメダ・ペルセウス神話にも同じように適用可能です。
機能分類のほうからいくつかの機能を選んで桃太郎を分析すると、例えば
「加害または欠如」→鬼が村を荒らしている
「主人公の出発」 →鬼退治に出発
「主人公の反応」→いぬ・さる・きじの「きび団子ください」に反応し、彼らを家来にする
「敵対者に対する勝利」→鬼退治に成功
「主人公の帰還」→宝をもって帰還。めでたし。めでたし。
となるでしょう。
分析して整理する目線をもっておくと、「こんな話ないかなあ」と感じた時に記憶から取り出してきやすくなるという利点があります。