山 | イメージ シンボル 小辞典

シンボル小辞典

1.山を象徴として解読する場合の素材

【聖書神話】
シナイ山でモーセが神から十戒を授かる
イサクの犠牲
山上の垂訓 (イエスの愛の教え)
キリストの昇天(復活後のイエスは、山で昇天)

【エジプト神話】
墓地の神アヌビスの称号「かの山の上にいる者」

【ギリシャ神話】
オリンポス山(オリュンポス十二神が山頂に住まう)

【日本史】
山岳信仰(聖地としての山・眺める山)
山岳信仰 (神に近づくための場所としての山・登る山)
山岳信仰(死者の世界・先祖の眠る世界・山越阿弥陀図 )
国見儀礼(支配者が山上から支配地を眺めて予祝)
神仙の世界(蓬莱山・神仙思想)

2.シンボルとしての山を考察

聖書神話のモーセは山に登って神から新しい共同体のルールを授かりました。これは、イスラエルの民を新しい未来という次の世界へ導くものです。この場合の山は、聖なる存在と対面する聖なる場所ということになります。復活後のイエスが山から昇天したのも、「神の世界に近い場所=山」というイメージを下支えするでしょう。ギリシャでも神々はオリンポス山の山頂に住んでいます。

古代エジプト的な文脈だと墓地の神アヌビスと山のイメージが結びつくので、山の向こうの異世界=死の世界、というイメージも連想できます。

山の向こうに「死後の世界」的な話は、日本でも似たようなモチーフがあって、山越阿弥陀図という、山の向こうから「阿弥陀様が顔を出してる」という絵があります。阿弥陀様は「死後の極楽浄土」の象徴ですので、山の向こうに「死後の楽園」みたいな話です。

死後の世界というより生きている神々の世界との結びつきでいくと、天孫降臨の神話は、高い山(高千穂)の上に神が降臨するという構成で、やはり山が「神の降り立つ場所」として設定されています。また、山にこもって修行するという山伏などの修行者は、山のもつ神聖な力をその身に宿す行為であると解釈することも可能です。

死の世界という暗さも含む所に結び付く場合と、神々の世界という神聖性のみの世界と、両方がイメージできるのも面白い所です。とはいえ、日本神話やギリシャ神話だと神々=先祖なので、先祖=死の世界に属する、と考えると、死者の国=神の国、で解読しても実はそんなに不自然さはないですが。

3.山とタロット

ウェイト版の愚者のカードをはじめ、背景に「山」が描かれることはわりとあります。これは、「山=神聖な非日常世界とつながる場所」というイメージを背景にしておくと、スッキリ読みやすくなると思います。

非日常世界は、「未来」につながる場合と、「過去」につながる場合とあります。

未来につながる場合は、モーセが十戒を授かったように「新しいルール」「新しい理想」みたいなものをイメージするとスムーズだと思います。

逆に過去、先祖の世界とつながった場合、「昔に戻る」という名の新しい世界への道が開ける可能性があります。イタリアのルネッサンスが「古代に還る」というキッカケで新しい文化の展開を見せたように、「古い根源」に戻ることは新しい何かを生む可能性があります。

トート版の月のカードは山っぽい背景がありますが、この場合は「死者の国の入り口としての山」みたいなイメージで読むと分かりやすいかもしれません。エジプト神話ではエジプトの墓地が山がちの荒野にあったので、墓地の神アヌビスと山のイメージが結びつきやすいという話があるので。

いずれにせよ、タロットに描かれている山が気になったら、「より広い視点でのビジョンが必要です」みたいな解読をすることが可能です。「いつもの日常」や「自分の常識」からいったん離れること、という解読をするとつながりやすいでしょう。

なお、山上の垂訓のイエスのメッセージをとても雑にまとめると「お前ら、みんなすごい!」になりますので、そういう雰囲気を強めて読んでみるのも1つの方法です。

4.ざっくりまとめ

山=非日常の世界とつながって元気になる場所

※非日常(死者の世界、未来の世界、神々の世界、をふくむ)

ということで。

5.参考文献・参考サイト

聖書
古代エジプトシンボル辞典(リチャード・H・ウィルキンソン)
wiki

nakajima oumi

nakajima oumi

シンボルと精神世界の研究家。 「キレイはキタナイ、キタナイはキレイ」。日本文化と欧米文化は異なるからこそ面白い。一般論や常識に違和感がある方歓迎。

関連記事

特集記事

TOP