雷神という枠で思いつく世界の神々は、北欧神話(ドイツ)のトール・印度神話のインドラ・日本神話のタケミカヅチ、今回はこの3人を比較してみましょう。豪傑的なキャラクターなのは同じですが、細かい所はけっこう違うキャラになってます。
1.トール Thor
神々に対立する巨人たちを次々と倒す最強の戦神。北欧神話の主神オーディンの息子。子ども時代は母親の言うことを全く聞かないあばれんぼうで、稲妻の精霊に育てられる。正確は直情的で豪胆。いい意味で戦士。策略的なことは長けていない。牛を丸ごと食べる大食漢の大男。ラグナロク(神々の最後の戦い)では、巨大な蛇の怪物ヨルムンガンドを打ち倒すがその毒によって自らも倒れ、最期をむかえる。なお、敵を倒すために女装するというエピソードもある。そこだけみると男の娘(女装男子)の元祖ヤマトタケルと似ている。※ミョルニール(雷の意味)という名のハンマーとその剛力を武器とする。
※英語 Thursday(木曜日)の語源はトール(Thor)の日から2.インドラ
性格は豪放で、豪傑肌の英雄神。神々の軍隊を率いて魔神ヴリトラと戦ってこれを退治する。ヴリトラは巨大な瀧であり干ばつを司る。インドラがヴリトラを退治すると天に穴が開き、天から水が降リそそぐ。ここでは、雷神と雨の恵みが関連付けられている。
色好みでも知られ、聖者ゴータマの妻ナハリヤーを誘惑し、妻を寝とられて怒ったゴータマに呪いをかけられてしまうエピソードも存在する。※武器はヴァジュラ(稲妻の意味)、金剛杵、ダイヤモンドでできた硬い武器
※「マハーバーラター」によるとインドラの矢としてしられる強力な武器をもち、一撃で敵の大軍を滅ぼしたとされる。
※仏教には帝釈天として導入されている3.タケミカヅチ
火の神の血から生まれる。国譲り神話においては小浜にてオオクニヌシと武力を背景にした交渉を行い、政権を譲らせることに成功する。神武東征の話では、苦戦中の天皇一行に人づてに剣を授けるという贈与者的役割で登場。武神・軍神として全国の鹿島・春日神社で信仰される。※イカヅチ=雷
※国譲り神話においては、力比べや交渉で目的を達成する
※日本の雷神としては、菅原道真公(天満宮)にも、強力な怨霊として清涼殿に雷を落とし天神(この場合は雷神のこと)として祭られたという話があります(参考文献 世界の神話百科(原書房) Wikipedia など)
雷ということでやはり武勇に優れた神様が多いのは雷神の特徴です。武神というところは同じなのですが、エピソードとしては
雷→破壊力→巨人や蛇の怪物をその剛力で退治する トール
雷→恵みの雨→「干ばつ」を象徴する悪竜退治の英雄で豊穣を司る インドラ
雷→天から地に落ちる→天の神の使者として地の神に降伏勧告をする タケミカヅチ
と三者三様なのも面白い所です。
物語を見る限り、トールは最強の兵士に、インドラは最強の将校(中級指揮官)に、タケミカヅチは最強の将軍になりそうです。歴史ジョークで、「日本人の兵士・下士官、ドイツ人の将校、アメリカ人の将軍」が第二次大戦最強の軍隊なんてジョークがありますが、古代の雷神を見ると「日本人の将軍、印度人の将校、ドイツ人の兵・下士官」が最強のようです。
余談ですが、トールを三国志の張飛的なキャラクターとすると、インドラは周瑜が、タケミカヅチは曹操が近いと私は思います。