犬(いぬ) | イメージ シンボル 私家版小辞典

1.犬(イヌ)を象徴として解読する場合の素材

【聖書関連】
食卓の下にいる子犬(マルコによる福音書7章27節)

【エジプト関連】
墓の神アヌビス(山犬の頭)

【ギリシャ神話】
狩猟神アルテミス
冥界の番犬ケルベロス
狩人の狩猟犬

【北欧】
冥界の番犬 ガルム

【日本文学】
枕草子や源氏物語にも登場(平安時代)
忠犬ハチ公

その他

2.イヌのシンボルとしての考察

一般にイヌのイメージが「忠実・従順」でありますが、これはネコの「気まま・自由」と対比して考えるとよいでしょう。「従順」というイメージは、プラスに見れば「30年仕えた忠実な執事」みたいなかっこいいイメージになり、マイナスに見れば「自分の意志を持たない奴隷」みたいなかっこわるいイメージになります。

また、ペットや仲間というより機能という視点で言うと、犬には、猟犬(狩りの手伝い)、家畜の番犬、食用、という機能もありました。羊などの番犬としての犬(牧羊犬)は、日本にいると少しイメージが薄くなりがちな部分かもしれません。

牧羊犬(羊飼いとして働く犬)


聖書にも人間と一緒に生活する犬が登場しています。ちょっと長いですが全文引用しましょう。

”26 この女はギリシヤ人で、スロ・フェニキヤの生れであった。そして、娘から悪霊を追い出してくださいとお願いした。27 イエスは女に言われた、「まず子供たちに十分食べさすべきである。子供たちのパンを取って小犬に投げてやるのは、よろしくない」。28 すると女は答えて言った、「主よ、お言葉どおりです。でも、食卓の下にいる小犬も、子供たちのパンくずは、いただきます」。29 そこでイエスは言われた、「その言葉で、じゅうぶんである。お帰りなさい。悪霊は娘から出てしまった」。30 そこで、女が家に帰ってみると、その子は床の上に寝ており、悪霊は出てしまっていた。”

こうしたエピソードからも犬がイエスの時代も愛される存在であったことが伺えます。

エジプト神話とギリシャ神話の文脈だと犬は「死」のイメージが強くなります。

冥界の番犬ケルベロス、墓やミイラの神アヌビス(山犬もしくはジャッカルの頭)、いずれも死の世界に縁が深い存在です。


日本文学では源氏物語や枕草子の中にも、犬は登場します。

「忍んで自分のもとへやってくる男性に吠える犬はうざい」

といった、番犬がガードしなくていい相手にまで吠えるのがうっとうしいといった妙にリアルさのある笑える描写もあります。

身近な動物だけあって、都市の中でどこにでも駆けずり回っていたようで、平安貴族の場合、「黒猫がよこぎられると不幸」という話はなくても「犬の死体にあうと不幸」という話はあったようです。


鎌倉時代・室町時代には、猟犬という役目だけでなく、馬にのって弓矢をいる訓練の的にもされていて、「流鏑馬(やぶさめ)」「笠懸(かさがけ)」と並んで、犬を動く的にして馬上から矢をいる「犬追物(犬を的にする)」が武士たちの間で行われていました。犬追物は、犬を殺さないように蟇目の矢(矢じりが刃ではない状態の矢)を用いたようです。

現代の日本人や欧米人は犬を食用としませんが、中国や朝鮮半島などを見ると古くから食用にもされています。徳川綱吉の生類憐みの令で犬の保護が行われる江戸前半以前は、日本でも犬が食用にされるケースはあったようです。三味線はネコの皮のイメージが強いですが、犬皮も使われており、現代では主に中国などから輸入しているようです。牛は食用にもなり皮製品にもなりと需要が広いですが、犬皮の処理は需要量がすくないので国内では商売が成立しにくいのかもしれません。

(羊頭狗肉という中国の諺がありますが、狗肉は犬肉をさします。羊の肉を売ってそうな店構えで、犬の肉を売るという見掛け倒しを非難する言葉。)

3.犬とタロット

いつものようにウェイト版とトート版で話を進行します。

トートタロットの月のカードには、山犬らしきものが登場します。これはエジプト神話のアヌビスを現しているものでしょう。冥界の番犬ケルベロスのようなものが描かれているのは、トートタロットの隠者のカードです。こちらの犬たちは「冥界・死の世界」のシンボルとして捉えればよいでしょう。

ウェイト版のフールのカードも犬にも狼にも見えるものがいます。

4.ざっくりまとめ 犬の意味

イヌ=「忠実」「従順」「勇敢」「死」

※同様に人間にとって古い仲間であるネコと対比しよう

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キリスト教シンボル辞典(ミシェル・フイネ),ギリシャ神話シンボル辞典(ソニア・ダルトュ),図解古代エジプトシンボル事典(リチャード・H. ウィルキンソン) ,サインとシンボル(アドリアン・フルティガー),図像学入門(山本陽子),聖書,Wikipedia (English,日本語)etc

※この記事は、理解のステップとして面白いものをという編集方針を基本としています。(シンボルという言葉は極めて広い意味で使っています。)

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